「考えには力がある」

自己実現の書籍ではよく「考えには力がある」という言葉が使われます。成功する人はその「成功の種子」であるところの「考え方」によって成功するのだと言われます。書籍もたくさん出ていますし、よく人口にも膾炙します。しかし自分のこととして考えたとき、いったいどれほどその力を実感したことがあるでしょうか。

以下の松下幸之助さんの逸話を読みますと「考えには力がある」という発想が、何か特別な能力を生まれつき持っている人だけに当てはまることではないことがよくわかります。経営を行ううえでも大変参考になると思われますのでご紹介いたします。

<立志> 
松下幸之助が「ダム式経営」を説いていた1965(昭和40)年頃の話です。松下は、京都の経営者を対象にしたある講演会で、例によって、資金、人材、技術等のダムをつくり、余裕のある経営をしていこうと訴えました。

質疑応答の時間に、1人の経営者が、「ダム経営をしなければならないのは分かるのですが、そのような余裕がないから困っているのです。どうすればダム経営ができるのでしょうか」と質問しました。一瞬困ったような顔をして松下は、こう答えました。

「まず願うことですな。願わないとできませんな」。あまりにも当たり前の答えに、具体的なノウハウを期待していた聴衆の間には、「なんだ、そんなことか」という失笑、ざわめきが起きました。

しかしそんな中に頭をガツンと殴られたようなショックを受けた1人の経営者がいたのです。京セラを立ちあげ、軌道に乗せようと懸命に奔走していた頃の稲盛和夫氏です。稲盛氏は後に、こう言っています。「何か簡単な方法を教えてくれ、というような生半可な考えでは経営はできない。できる、できないではなく、まず、おれは経営をこうしようという強い願望を持つことが大切だ、ということを松下さんは言っておられるのだ。そう感じたとき、非常に感動しましたね」 

松下は、みずからの事業体験を通じて、何事を始めるにも、まず強い願い、志を持つことが出発点で、強い願い、強い志がなければ決して事は成就しない、と考えていました。だからこそ、こうも言うのです。「本気になって志を立てよう。命をかけるほどの思いで志を立てよう。志を立てれば、事はもはや半ば達せられたと言ってよい」松下は「立志」と書きながら、みずからの思いの強さを確認していたのかも知れません。

(松下幸之助「真筆集」永遠の言葉』より)

志をたて、願望を実現するためには、その考えの「正当性」を前提として、念いの「強さ」と「継続性」、そして「公益性」が重要となります。「強さ」については「思う」⇒「想う」⇒「念う」の順番に強くなります。喩えるなら「思う」は水に文字を書くように、一瞬一瞬、頭をよぎる程度のものです。「想う」は砂に文字を書くような感じで、一定の継続性と方向性は持っています。そして「念う」は岩に文字を刻む強烈な願望です。「念力」と言われるように、強烈に一点に念いを集中します。

このように、考え方も「念い」まで到達しないと現実化する物理的な力を帯びないものなのです。そして「念いの強さ」は一定期間の継続性がなければ成就しません。一時的に、気まぐれに思っただけでは実現しないものなのです。そして「公益性」は「協力者」を呼び込みます。(反社会的な願望だと「世の中から阻止する力」が働いてきますので、実現しにくいと言えばわかりやすいかも知れません)大きい事業は特に協力者なしで成就するものではありません。

最後に筆者がもっとも気をつけている点は、前提にある「正当性」、自分自身の「動機」です。この「動機」が正しいものであれば、協力者だけではなく「天」をも味方につけることになるからです。(歴史の中で異常性のある発展を遂げた事業家などはこのタイプが多いと言われます)ですから筆者は、皆さんが願望を持つ際には「私的願望」と「公的願望」を調和させることをお勧めします。自分のためだけの成功や発展というものは長くは続かないものです。自分の成功が他人にも喜ばれるような調和した姿が大切です。

この「動機の正当性」は、その人が望むに相応しい願望であるかどうか、その願望の動機において不純なるものがないかどうかが問われます。動機の正当性におうじて、正当なる成功・発展のレールに乗ることができるのです。その動機において「乗る列車。即ち人生のゴール」が決まります。

10年、20年を経過して「私の望んだ成功はこんな姿じゃなかった」という場合は、この最初の「動機の正当性」が自分の良心に照らして道を外れていたということです。これは念いという「種子」の段階がいかに重要かをあらわしています。アサガオの種にはアサガオの花しか咲きません。 ヒマワリの種にはヒマワリの花しか咲きません。晩年に人生を嘆く人がいるとしたら、自らの望む花を咲かせるために、それに相応しい種子を蒔かなかったことに原因があるのです。それだけ最初の「動機の正当性」は重要なものなのです。

ともあれ何事もまず思うことから始まります。強い念いはおのずと目標を明確化し、計画をつくり、協力者を募るものです。ゆめゆめ自分の念いの弱さによる不成功の原因を、他人のせいになどしないよう自戒し努力を継続してゆきたいと思います。 

以下、1千万部以上のベスト&ロングセラーとなり、20世紀アメリカの繁栄の基礎を築いたナポレオン・ヒルの名著から、関連する文章を抜粋いたします。

Thoughts Are Things

Truly, “Thoughts Are Things,” and powerful things at that when they are mixed with definiteness of purpose, persistence, and a burning desire for their translation into riches, or other material objects.  

(Napoleon Hill “THINK & GROW RICH”)

思考は物体である

実際に「思考は物体」なのであるが、その思考がはっきりとした目的や忍耐力、そして思考によって富を得たい、もしくは具体的な物を得たいという燃えるような願望と混ざり合ったときに、強力な物体となる。<ナポレオン・ヒル<現代成功哲学>