
『私自身の経験から言うと、「失敗に見舞われたときほど成功に近づいているときはない。なぜなら、そういうときこそ人は考えざるを得ないからだ。正しく、かつ粘り強く考え続ければ、いわゆる「失敗」も、新たな計画や目標で自分自身を装備せよという合図にすぎないということがわかる。一方、本物の失敗は、たいてい自分で自分の心の中に設けた限界によるものが多い。それとて、一歩前に踏み出す勇気さえあれば、そんな自分の誤りに気づくことができるはずなのだ。』(アンドリュー・カーネギー)
これは1908年にナポレオン・ヒルがアンドリュー・カーネギーに行ったインタビューで、アンドリュー・カーネギーが語ったと言われる言葉です。
成功したいと願う人はたくさんいます。しかし失敗に見舞われたときほど成功に近づいていると考えることは難しいものです。人はできれば挫折や失敗、困難に遭遇することなく成功したいと思うものです。しかし本当の成功とは「成功の果実」の部分だけが「ある日突然」訪れるようなものではありません。
成功するためには、いずれかの段階で「成功にいたるプロセス」としての代償の法則が働きます。その人の成功の器に応じた「自分の限界の壁を越える試練が与えられる」ということを確信できるかが大変重要です。
大成功者はすべからく「人生の問題集に対する読取能力」、つまり人生が自分にいま何を教えんとしているのかについての洞察力が高く、かつ一瞬で見抜く判断力があるといいます。ではなぜ限界の壁があらわれるかと言うと、それを越えなければ、その後にくる成功を受け止め維持してゆくことができないからです。筆者はこのことを、この世界が「善なる法則」に満ちていることを証明する一旦を示すものであると考えています。
冒頭の文章に戻りますと、カーネギーは「失敗は自分で自分の心の中に設けた限界によるものが多い」と言っています。これは「成功も失敗もすべて自分の心の中にあり、それが現象化している」ということを言っているのです。「考えていることそのものが、あなた自身である」のなら、自己変革とは「自分が時々刻々に考えていることそのものを変える」ことを意味します。そして「思考の習慣」を変えることには、強い強い意思の力と継続が必要です。
「思考は物体」であり、「自分とは自分が心の中でイメージし続けた姿が現象化した存在」です。「こうありたい」と思う自分を現実化させるために、それに必要なあらゆる条件は「すべて自らの心の中にある」ことに気づくことが出発点となります。そして今までイメージし続けた自分に入れ替えるべき「理想の自分の姿」を、「明確な目的」「忍耐力(持続力)」「燃えるような願望」を持って願い続けることで、必ずその方向に変わってゆく自分を発見することになります。
今日は「限界を越え自分を変える」ことの具体的な方法論として、ナポレオン・ヒルの成功理論から「富を手に入れるための六か条」をご紹介いたします。「富」の部分を自分自身の願望に置き換えて考えると、イメージしやすいと思います。
「富を手に入れるための六か条」
あなたが達成したいという願望をはっきりとさせること。単にお金がたくさん欲しいなどというような願望設定はまったく無意味なことである。
達成したいと望むものを得るために、あなたはその代わりに何を“差し出す”のかを決めること。この世界は、代償を必要としない報酬など存在しない。
あなたが達成したいと思っている願望を取得する「最終期限」を決めること。
願望実現のための詳細な計画をたてること。そしてまだその準備ができていなくても、迷わずにすぐに行動に移ること。
達成したい具体的願望、そのための代償、最終期限、そして詳細な計画、以上の四点を紙に詳しく書くこと。
紙に書いたこの宣言を、一日に二回、起床直後と就寝直後に、なるべく大きな声で読むこと。このときあなたはもうすでにその願望を実現したものと考え、そう自分に信じ込ませることが大切である。
この六か条を読んだだけでも、ナポレオン・ヒルの成功理論が「願えばかなう」というだけの浅薄なものではないことがわかります。ナポレオン・ヒルの成功理論は、カーネギーが指名した成功者500人(これから成功する人も含む)と、その他成功した著名な人々の実に25000人と言われる人生のケーススタディを20年間にわたって研究したものであり、いわば人生万般に応用できる成功哲学、成功法則です。
筆者自身の小さな実践経験ですが、過去に自分で書いた計画を見返したときに「いつの間にか実現していることが多い」ことに驚いたことがあります。計画はいつしか習慣になり、その当時の自分には違和感があった大きすぎる目標が、忘れた頃には違和感なく馴染んでいるのです。まさに「目標を最初に立てた頃の自分ではなくなっていること」を実感したことを記憶しています。
これから10年後、20年後、自分が変わっている姿を考えると大変楽しみであるとともになんとも言えない不思議な気持ちになります。筆者は自分自身の人生を使い、成功と幸福の実証者となり、その経験をもとに多くの成功者、幸福な人をつくってゆくお手伝いができれば嬉しいと考えています。
(出典:ナポレオン・ヒルの巨富を築く13の条件(騎虎書房))